前歯のすき間が気になる、銀歯が目立つので白い材料でやり直したいというご相談を頻繁にお聞きします。
金属はアレルギーを心配される方も年々増え続けており、お口の中にはなるべく入れたくないというお気持ちはよく分かります。
また、むし歯の治療ではなく自然にできてしまった歯のすき間を埋めるために健康な歯を削るのは避けたいと希望されるのも当然といえます。
金属を使わずに歯の形を直す審美歯科治療としてダイレクトボンディングとオールセラミック修復の二つがありますが「どう違うのですか?」とご質問を受けることが非常に多いです。
松田歯科医院でダイレクトボンディングを受けられた患者さんのご紹介
まずは、両方の治療法の特徴を表で比較してみます。
ダイレクトボンディング オールセラミック修復
主な材料 コンポジットレジン(強化プラスチック) 高強度セラミック、ジルコニア
治療回数 最小1回 最小2回
歯を削る量 0~極わずか 0~1.5㎜(通常1㎜以上)
耐久性 やや劣る(修理は可能) 高い(修理は困難)
変色 飲食物等の色素が徐々にしみこむ 起こらない
型取り 不要 必須
この表だけでは具体的にどのように使い分けるのか分かりづらいので、実際に松田歯科医院で行った治療を元にご説明します。
下の写真は自転車で転び歯をぶつけて折れてしまった患者さんが来院された際に撮影したものです。
左右の上の前歯が折れたのですが、右の歯はオールセラミックのかぶせ物、左の歯はダイレクトボンディングで修復しています。
同時に折れたのに右の歯と左の歯の治療法が違うのは双方の折れた位置が異なっていたためで費用の問題ではありません。

左の歯は先端が折れただけで修復する範囲が少なく、ダイレクトボンディングであればほとんど削らずに神経を残せるので強化プラスチックの強度で十分です。
さらにご自分の歯が十分残っているので強固に接着することで材料が外れる心配もほぼ無くなります。
しかし、右の歯は根元まで折れていたので噛む力に耐えられる高い強度が必要であったことと接着できる歯の部分が少なく外れやすかったためオールセラミックのかぶせ物を作りました。

このように強化プラスチックを直接歯に接着して形を直すダイレクトボンディングでも、ステップをしっかりと守って磨き上げることで歯科技工士さんが作り上げてくださるセラミック冠と遜色のない輝きと滑らかさを得られます。
保険適用外となりますが、歯を削らないことでご自分の歯を保存して神経を残す可能性が飛躍的に高まるダイレクトボンディングが人気を得る理由をご理解いただけると思います。
単にむし歯でできた穴を埋めるだけであれば保険適用のコンポジットレジン充填で十分な場合も多いのですが、土台となる歯と違和感のない色調と輝きを再現するだけなく周りの歯と調和する形に盛り上げて自然な笑顔を手に入れていただくためには治療技術の研鑽が欠かせません。
さらに、最新の技術・材料に関する情報を常に集め続けて有効性を確認したうえで治療に取り入れることが求められます。
松田歯科医院では常に上記の努力を続けております。
以上のようにダイレクトボンディングはメリットの多い治療法で、特に短期間で歯を削る量が最小限であることが評判となっています。
残念ながら、デメリットとして材料を盛り上げてから表面を滑沢に磨き上げる必要性があげられます。
そのため診療時間が長くなる傾向がありますが(1~2時間)、表面を磨くステップを省いてしまうとプラーク(歯垢)が溜まりやすくなるためむし歯や歯周病を引き起こすリスクが格段に高まってしまいます。
特に、治療の範囲が歯ぐきの下まで及ぶ場合は歯ぐきを傷つけずに磨き上げることは不可能なので、ダイレクトボンディングの適応とはならずオールセラミック修復のみが可能となります。
このような理由で、治療方法の選択についてはお口の中を診察してから相談させていただいております。
松田歯科医院
院長 松田拓己