新潟市西区の歯医者、歯科医|松田歯科医院の院長 松田拓己です。
【略歴】
平成2年 新潟大学歯学部卒業
平成2年~5年 新潟大学歯学部付属病院口腔外科勤務
平成5年~6年 長野赤十字病院口腔外科勤務
平成9年 新潟市西区小針にて松田歯科医院開業
西区で歯医者を続けて25年たちますが、治療のために歯を削る際はかなり緊張してしまいます。
もちろん、毎日のようにむし歯を治してきましたので、不慣れなために緊張するわけではありません。
できるだけ歯の寿命を短くしないために、削る量を少なくしようと考えながら治療するので緊張します。
「歯を治す」とはいっても、穴が開いたり割れてしまった歯が元に戻るわけではないので、極力削る量は少なくしたいのです。
どれだけ優れた材料が開発されても、歯と一体化するのは無理でしょう。
なので、歯を削る量は最小にして、できれば歯を削らないで済んで欲しいのです。
そう考えると、悪くなってから治療を始めるよりも、予防に力を入れる方が理にかなっていますね。
ただ、理屈では分かっていても、自覚症状がないのに予防を一生懸命がんばるのは難しいものです。
これは、患者さんだけでなく、歯医者にとっても一緒です。
「痛い」「噛めない」「見た目が悪い」などの、分かりやすい問題を解決する方が取り組みやすいですし感謝もされますから。
私も同じように感じていたのですが、治療が上手くできるだけでは足りないのではないか、健康を守るための予防を第一に考えるべきなのでは?と考えるようになった出来事がありました。
新しい治療法を勉強するために歯科専門の本を読んでいたら、お医者さんと歯医者の考え方はどの辺りが違うのか?という記事が載っていたのです。
ちょっと変わった話題でしたので、興味を持って読んでみました。
医師と歯科医の違いと言えば、身体全体を診るか、口の中だけを診るのか、というのが一番ですね。
ただ、その記事で強調されていたのは、治療できる範囲だけでなく、病気に対する考え方に大きな違いがある点でした。
特に、歯医者側の考え方に問題があるのではないか、と筆者は主張していたのです。
どのような問題があるのか?簡単な例え話で説明されていました。
突然、手足の指先がマヒし始めて動かせなくなり、徐々に腐っていく奇病が流行し始めたとします。
大学や病院で必死に研究しましたが、残念ながら効果のある薬が見つからず、病気の進行を食い止めるには悪くなった部分を切り取るしか治療方法がありません。
このような怖い奇病が本当にあるとしたら、お医者さんはどのように対処してくれるでしょうか?
手足がなくなってしまった気の毒な患者さんのために、使い勝手の良い義手や義足を開発して下さるかも知れません。
また、切り取る場所を最小限にするため、病気にかかった場所を正確に突き止める手段も求められるでしょう。
きっと、様々な優れた治療方法が見つかるはずです。
すでに手足が失われた方が大勢いらっしゃるはずなので、より良く治す研究や技術は重要になります。
手足を元通りに動かせるだけではなく、本物と見分けのつかない義手や義足が開発されるかも知れません。
でも、需要があるからと言って、お医者さんが手足が無くなってからの治療だけに夢中になっていたら、少し怖いと思いませんか?
事故や先天的な理由なら防ぐのは難しいですが、進行するのに時間がかかる病気でしたら、初期のうちに検診で見つけるか、病気を予防する方法を探して欲しいですよね。
実際、多くの病気について予防の手段が確立されて、検診も広く行われています。
それでは、歯科の方はいかがでしょうか。
私が読んだ記事では、歯医者はむし歯で欠けたところを埋めたり、歯が無くなった場所を元通りの形に戻すのには一生懸命だが、歯が悪くならないように考えることは少ない、と書かれていました。
確かに、病気になったところを治して、以前の状態に近づけるのは大切ですし、治療を発展させるために研究・修練を重ねるのは尊いことです。
それでも、病気が発生する前に防いで健康を維持するのが、患者さんへの貢献としては最も重要ではないか、と記されていました。
すでに、20年近く前の話ですので、今よりも予防について語られることが歯科では少なかったので、かなりの衝撃を受けたものです。
自分なりに歯を治療する技術が上がってきたと感じていましたので、「それだけでは足りないよ」と面と向かって指摘されたように感じました。
できるだけ長くご自身の歯で食べ続けていくには、むし歯や歯周病にならないことが一番大事です。
長持ちするように考えて治療は行いますが、人工物は天然の歯にはかないません。
ぜひ、歯を悪くしないための予防を今日から始めてくださいね。
歯科医師 松田拓己
(新潟市西区の歯医者、歯科医|松田歯科医院 院長)